我が家の色々な事情を知る、
50歳の看護婦さんが、夫に噛み付いた。
数時間の、水掛け論。
私は、乖離状態で、ただ、そこに「居た」だけだった。
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「このコは、貴方に助けを求めてたんじゃないの?
貴方に支えて欲しかったんじゃないの?
そして、このコを助けるべきも、支えるべきも、
貴方だったんじゃないの?」
「俺は、障害を持っていて、
自分で自分の事ができないような人間は
淘汰されるべきだと思ってる。
身体障害だろうが、精神障害だろうが、
自分で働いて、飯の食えない人間、
自分の力で生きていけない人間は、ほっときゃ、のたれ死ぬ。
そういう人間は、のたれ死ぬべきなんだ。」
「自分の親でも、子供でもそう思えるの?
自分の親や子供が、障害を持ったり、
年老いて余命いくばくもないとしても、貴方はそう言うの?」
「生まれる前から障害児と分かっているなら、
そんな子供は生まれてくるな。それが俺の考えだ。
親が倒れようと、俺は面倒を見る気は無い。
それは、嫁に対しても一緒だ。
嫁に、薬が必要になって、俺はコイツの面倒は見ない、と思った。
それだけだ。」
「じゃあ、貴方が明日、交通事故にあって、
誰かの介護が必要になったときは?」
「嫁の世話にも、親の世話にもならない。」
「でも、医者や看護婦の世話にはなるのよ。
人間、1人じゃ生きていけないのよ。」
「だったら、潔く死ぬね。」
「このコが求めていたものが何なのか、
貴方は分からなかったのね。
だから、このコは、苦しかったのよ。
人の精神なんてね、簡単に壊れるの。
病的なレベルにまでいかなかったとしてもね。」
「確かに、嫁は、俺と付き合いだした当初は、
薬なんて必要なかった。
結婚して、ガタガタやってるうちに、薬が必要になった。
薬を飲まないようにしたがってたのも知ってる。
だから、症状がどうにもならない時だけ飲んでた。
今、飲んでいないことも知ってる。
俺が壊したのかもしれない。
でも、例えそうだとしても、淘汰されるべき人間の面倒を
俺は見る気はねぇんだよ。
精神が簡単に壊れる? 壊れないヤツだって沢山いるんだよ。
壊れる様な人間は、淘汰されて当然だ。」
「このコはちゃんと働いてる。
人一倍、仕事でも認められてる。
薬を飲んでた事なんて、誰も知らなかった。
そんな素振りさえ見せなかった。
例え、薬を飲んでいたとしても、仕事と家事とを両立して、
人並みに生活をしてきてる。
それが、淘汰されるべき人間?」
「コイツの遺伝子は、残すべきじゃないんだよ。」
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・・・私は、淘汰されるべき人間ですか?
・・・私の遺伝子を後世に残してはいけないのですか?
じゃあ。
そんな私と結婚生活を送ってきた貴方は、
一体何なのですか・・・?
私は口を閉じたまま、
涙を流し続けた。
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「アンタも可愛くないけど(笑)、
アンタの旦那もかなーり可愛くないね。
ある意味、異常だよ、アレは。」
看護婦さんは、最後に、私にそう告げた。
そして私は、最後にこう答えた。
「私の夫を、悪く言わないで・・・。
私が選んだ、最高の夫よ・・・。」
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