幼い頃から、両親に言われた事。
「お友達は、そのコの成績と、家柄で決めなさい。」


その頃から、疑問は感じていた。
だから、そんなコとは友達になりたいとも思わなかった。


私は、クラスに精神薄弱者のコがいれば、そのコと仲良くしたし、
不登校のコがいれば、そのコと仲良くした。
勿論、普通の友達もいたけれど。


両親は、それに怒り、学校まで出向いていったほどだ。
でも、私は。
心の痛みが分かる友人が、一番信頼できた。


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確かに、私は少しばかり裕福な家庭で育った。
親戚も、皆、優秀で、金持ちだった。
しかし、祖母がいつも嘆いたことは、
「うちには、医者だけがいない」という事だった。


医者がいなければダメなの？
医者がいないと、この血筋は途絶えるの？
医者がいないと、何が困るの？


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私は、祖母にとって、たった一人の「孫娘」だ。
従兄弟は全て男。そして、誰も医者にはなれなかった。


だから、私は幼い頃から、
「貴女はお医者様と結婚するのよ。」と、周り中に言われながら、
その期待を一心に向けられながら、育った。


お医者様に嫁がせても、恥ずかしくない女になれるよう、
その為の、習い事や、教育、しつけに、
誰もがお金を惜しがらなかった。


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・・・ところが。どうだろう。
こんな今の私は。
そして、私の旦那は、医者どころか高卒だ。
職業だって、ただのコンピュータープログラマーだ。


おかげで。
私が結婚した事実は、両親しか知らない。
祖母も、親戚も、誰も知らない。
のん気に、私の見合い相手の医者でも、探しているのだろう。


私の結婚を知った両親は激怒し、そして言った。
「お前のせいで、世界の片隅で小さくなって、
泣きながら生きていくしかない・・・。」
その言葉に、私は何の気持ちも沸き起こらなかった。


私は、私だ。
私の人生は、私のものだ。
それは、譲れない。

私は、セックスが好きだ。
色々な男と寝てきた。
一夜限りの男も沢山いた。


「気持ちがいいから好き」というだけじゃない。
勿論、好きな人と、肌を重ねる事は、
これ以上ない幸福感に包まれる。


でも。


ずっと淋しかったんだ。
誰かに傍にいて欲しかったんだ。

それが、好きじゃない男でもいい。
一夜限りでもいい。


男は、「やりたい」だけで、私を抱く。
私と「やりたい」為だけに、私に会い、偽りの甘い言葉を囁き、
サービス精神旺盛なヤツは、一夜限りの腕枕までしてくれる。


私はただ、それが例え一夜限りでも、温もりが欲しかった。
その温もりの後味だけで、何とか生き抜いてきたんだ。


誰でもいい。何でもいい。一瞬だけでもいい。
お願いだから、誰か私を必要として・・・。


愛なんて、いらない。
言葉なんて、いらない。
同情なんて、いらない。
誠意なんて、いらない。
何にも、いらない。


いいよ。私のカラダなんて、いくらでも提供してあげる。
だから、一晩だけ傍にいて。
明日からまた、生き抜いていくために、
ほんの少しの人肌の温かさが欲しい。


・・・ただ、それだけだったんだ・・・。

母の日には、いい思い出が無い。


幼い頃から母親に愛されなかった私は、
小学校3年生当時の母の日に、貯めたお小遣いで
1000円のネックレス＆イヤリングのセットをプレゼントした。

その辺の、ショッピングセンターに売っていた、たかが1000円の宝石。
でも、それはキラキラと淡いブルーに光っていて、
私の幼心を魅了した。

「こんな綺麗なものプレゼントしたら、
そしたらお母さんは、私の事、可愛がってくれるかも！」


母の日。
弟の「肩たたき券」の薄っぺらい紙切れと、
私の1000円の宝石を一緒にプレゼントした。
「まあ、嬉しいわ！　ありがとう！」
・・・そう言ってもらえると思ってた。


母親は冷たい目で私に言った。
「こんな偽物！」
そして、私の目の前で、ゴミ箱に投げ入れた。


高校生になった頃。
何気なく開けた、タンスの引出し。
そこには。
あの日、弟が一緒にあげた、薄っぺらい「肩たたき券」が、
変色しながらも、大切にしまってあった。

結婚前。数回、「不倫」というものをしたことがある。


一番最初の不倫は、確か20歳の時。
相手は42歳だった。
アルバイト先の取引業者の人だった。
ただの、「オジサン」だった。
お金も無いし、格好よくもなかった。
女にモテるタイプでもなかった。


でも、20歳の私は、まだそんなに歪んでなかった。
ただ、純粋に、人に愛されたかっただけだ。
彼に、お泊りは絶対させなかったし、
彼の自宅に電話だってしたことがない。
彼の家庭を、壊したくはなかった。


自分が18歳で家を飛び出した事もあって、
「家庭」とか「家族」というものに、
ものすごい憧れがあった。

冷たい、暴力の飛び交う、精神的苦痛を与えられる、
愛情の欠片も、自分の居場所さえない家庭で育ったから、
彼の家庭を壊したいとは、これっぽっちも思わなかった。
家庭を大切にして欲しいと思ってた。


毎日、会ってはいたけれど、ちゃんと門限には帰した。
それに、私の誕生日はクリスマスイヴ。
彼は「一緒に過ごしたい。」と言った。
私は、「プレゼントを持って帰ってきてくれるパパを
待っている子供がいるよ。」
と、やっぱり冷たく帰した。


その後。
歪みに歪んでいった私。
でも、どこかで、「女って怖いな」って思ってた。

若さだけで、1つの家庭を簡単に壊せる。
後々の不倫では、色々なことをやらかしたけれど、
それは、「若い女っていうだけで、一体どれだけの事が
できるのか？」という、
歪んだ私の興味だった。

お金も、欲しい物も、快楽も、全て簡単にもらえる。
壊してみたいものは、簡単に壊せる。
勿論、リスクはあるけれど、それは当時の私にとっては、
大した問題ではなかったし、大した事だとも思わなかった。


幼い頃から、全てを我慢してきた。
だから、全てを、思うがままに動かしてみたかった。
我慢なんてしない。
今、大切なのは私だけ。
・・・そう、本気で思ってた。


でも。
今、自分が結婚して、
自分が一番欲しかった自分の「家庭」を手に入れて。
旦那と2人きりだけど「家族」で。

・・・そんなに簡単じゃないんだなって思う。
そんなに思う通りになんていかない。
そんなに簡単に壊れない。
世の中も何にも分かんない、家族の愛も知らない、
若いだけが取り柄の女に、
そんな権利もなければ、力も無いよ。


そう。自分に浸っていただけ。
「何でもできる」って。

そして。
誰か。誰でもいいから。形だけでもいいから。
「愛」というものを与えて欲しかっただけだ。
それが偽物だと分かっていても。

幼い頃からずっと、
人の顏色を伺いながら生きて来た。
ビクビクしながら生きて来た。


私はここに居ていいの・・・？
私の本当の居場所はここにある・・・？
私は誰かに認められてる・・・？
私は誰かに必要とされてる・・・？


そして。
この年になるまで、何とか生きて来た。
社会の枠からはみ出す事も無く、
上手く人間関係をも取りながら、
ちゃんとやってる。


人並みに結婚し、
人並みに友人がいて、
人並みに仕事を持って、
人並みにお金を稼ぎ、
人並みに生活している。


でも。
生きていることが、たまらなく怖い時もある。
1人、孤独に、一体いくつまで年を重ねていくのだろう？


こんな私を愛してくれるあなたが、
私を本当に必要としてくれているのかは、
今の私には、正直分からない。


それでも。
あなたが「生きてていいんだよ」って言ってくれたから。
今は、それを信じようと思う。

幼い頃から、
「貴女は、お医者様と結婚するのよ。」と、
私を医者に嫁がせても恥ずかしくないような娘に
育て続けた母。


ねえ、母さん。
あなたの娘は今、
2人の医者を手玉に取っているわ。


そうね。
例え、私が独身で、彼等も独身で、
「お医者様と、結婚前提のお付き合いをしているわ。」
と言ったところで、あなたはきっと、
「開業医じゃなくちゃ。」と言うでしょうね。


いつも、そう。
あなたの望む通りになれば、
私はあなたに愛してもらえると思っていた。


でも。
いくらあなたの望むようになっても、
あなたは決して、それに満足しないわ。
それは、実証済みよね。


もっと上、もっと上、と
限りなく私に求め続けて・・・。


でも、1人のお医者様は、来年開業するのよ。
そして、私を秘書にするんだと言っているわ。
奥様も子供もいるけれど、
彼は私に夢中よ。
彼は私から離れないわ。


どう？　母さん。
あなたの娘は、医者に愛され、
大切に、大切にされているわ。
開業医の次は、何をお望み？


そして・・・。
こんな娘に、満足かしら？

キスやセックスが、ゆっくりと穏やかで、
優しさを感じさせる男がいれば、
性急で、激しい男もいる。


昔は、後者に魅力を感じた。
私の全てを奪ってくれる激しさに、心惹かれた。


何かに飢え、貪るような口付け。
そのまま強引に押し倒され、
何を考える間も無いまま、
私は征服される。


今は。
何故か前者に魅力を感じる。
「奪う」のではなく、「守る」ような、愛を感じるからだ。


ゆっくりと唇を重ねあう。
体が1つになる歓びを噛み締める。
そのままでずっといたいと思う。
ゆっくりと、自分と相手の気持ちを確かめていく。


「激しい愛」よりも「優しい愛」が欲しいと思うのは、
年をとった証拠だろうか・・・？

「みやび。俺、彼女ができたんだ。
・・・だから、お前とは逢えなくなる。」


「好きにすればいいよ。」


・・・こんな展開、あなたとはもう何度目だと思っているのかしら？
いつもいつも、「彼女ができた」と言っては、
私からほんの一時期去っていって、
2〜3ヶ月後には連絡が来て、
「愛してるよ。やっぱり俺は、みやびを愛してるんだよ。」
って、あなたは囁くの。


あなたが私から離れていくのは、あなたの自由よ。
私はバカな女じゃないから、
そんなあなたを追いやしないわ。


戻ってくる事が分かってるもの。
しかも、その「彼女さん」とやらに、
少しだけいい男にしてもらって、返してもらえるんだもの。
そんな美味しい話はないでしょ？


まあ、せいぜい、ラブラブしてて。
どうせ、2〜3ヶ月後には、
あなたは私を抱き締めて、「愛してるよ」って言うの。


でも。
私がいつまでも、あなたの為に席を取っておくなんて
思わない方がいいわよ。


あなたが今度、戻ってくる頃には、
あなたを受け入れるようなスペースは、
私には無いかもしれないんだから。


私が今よりも、いい女になっていれば、
あなたと私は釣り合わないわ。
その時は、私は、もっとレベルの高い男と付き合っているわ。


だから。
フラフラしないで、ずっと私の傍にいればいいのよ。
それが分かっていないんだから、
あなたはいつか、私に本当に捨てられるわ。


・・・おバカさんね・・・。

本当の事を告げない優しさ、もある。


本当の事を知らない幸せ、もある。


でも。
知ってしまった後は。


自分で自分の胸を貫きたくなる。
自分のプライドという刃物で・・・。

つないだ手を、離さないで


このまま、離さないで


ずっとずっと


このまま


お互いの温もりを感じ取れるままで


離さないでいて・・・。


私の全てを賭けて、今、願う事。

人は、何％の可能性があれば


物事や人を信じてみようと思うのだろう？

チャレンジしてみようと思うのだろう？

自分の人生を賭けてみようと思うのだろう？


この平穏な生活を壊すというリスクを背負いながら

私は


何％の可能性があれば、踏み切る覚悟ができるのだろうか・・・？

お気に入りだったコップを
落として割ってしまった。


割れてしまったものを、
元に戻そうなんて無理。


どんなに頑張って、破片を拾い集めようとしても、
細かい、細かい、破片のクズや粉までは、
拾い切れない。


そう。
どうしても、どうやっても、
どんなに元に戻したくても、
元には戻らないものだってある。


手離したくなくても、
思い切って捨てるしかない時もあるんだ。


お気に入りの大好きなコップを、
割ってしまった事に動揺して、その判断ができないと、
破片で指を切るわ・・・。


割れてしまったコップを片手に、
指から流れる血を見つめて、
あなたは今、何を思っているの・・・？

わたしは、耳で感じるの


男がわたしを愛撫するのに立てる音や
耳元で囁く声
男が感じて出す声


そういうのに反応してしまうの


それを伝えて、気持ち良くしてもらうことは簡単だけど
私は決して言わないわ


だって


わたしが感じる場所は
あなたが自分で探すものよ


探し当てたら、そのときは


とびきりのご褒美をあげるわ・・・

「意外性」に、男は弱いのよ。


いつも強がっている女が、ホロっとないてみたり
真面目でお堅いと思っていた女が、急にキスをしてきたり
大人しそうに見えてた女が、実は姉御肌だったり
男勝りな女が、実に手際よく料理を作ってみたり


「意外性」を使うときは、
ある程度の時間をかけて、じっくり相手を落としていくわ。
七変化の、色々な私を、たっぷりと堪能させてあげる。
飽きないわよ、きっと。
次は何が出てくるかと、ドキドキしっぱなしよ。


私は、私の中で、使えるものは全て使うわ。
私自身が武器なの。
女であることを、全て有効に使うわ。
私を使えるのは、私だけなんだから。


そして。欲しいものはちゃんと自分で手に入れるの。


・・・手に入らなかったときは・・・


私とは、縁が無かった、
所詮、私には似つかわしくないものだった、

・・・そう思うだけよ。

ねぇ。


こうやって。


抱き締めてくれるのが、真実？

キスしてくれるのが、真実？

涙を指で拭ってくれるのが、真実？

抱いてくれるのが、真実？


・・・ねぇ・・・　　


・・・何が・・・真実・・・？